TRIAD

飯田善國のコレクションを展示・収蔵するギャラリー棟「IIDA-KAN」、精密減速機・制御メーカーである株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズが試作・研究を行う研究棟「I・K KAN」、高いセキュリティーを実現する「守衛所」の3棟で構成される複合建築群です。これらアート、テクノロジー、セキュリティーという機能も規模も全く異なる建築群に、設計・監修を担当した槇総合計画事務所の代表で世界的にも高名な建築家である槇 文彦(まき ふみひこ)氏が、「それぞれの間に形態的にも、空間的にも、ある種のハーモニックな対話を成立させたい」という意味を込めて、「三つ組」という意味が語源で、音楽では「三和音」の意味もある「TRIAD」と名付けました。

「TRIAD」は実用性を兼ね備えた美しい建築群としても高い評価を得ております。

IIDA-KAN(ギャラリー棟)

飯田善國の作品を収蔵、展示するギャラリー棟です。
戦後の日本を代表する独創的な彫刻家の一人として、さらに個性溢れる詩作や鋭い視点からの美術評論でも知られる飯田ですが、アーティストとしての出発点は油彩による絵画にあります。当館では飯田の彫刻約20点、絵画約170点、ドローイング約620点、コラージュ約240点、版画約120点、その他手記や手紙等約3,200点を収蔵しており、飯田作品の収蔵数では一番のギャラリーです。建物は作品の収蔵庫を回遊型の展示空間が囲む構成となっており、巨大な彫刻「SCREEN-CANYON」の常設展示室と絵画等の企画展示室を一繋がりに一巡できるようになっております。また、積雪のある穂高の自然環境を考え、樋(とい)無しに雪解け水が一か所に流れ落ちるように構想された二葉の屋根も特徴の一つです。さらに「SCREEN-CANYON」の背景となる曲面の壁は、回遊動線の流れと「I・K KAN(研究棟)」の楕円形態にも呼応しております。

I・K KAN(研究棟)

株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズが高次元の理想、高精度を追求するための試作・研究を行う研究棟です。高精度を追求する研究棟という用途から、室内環境は高気密性、一定温度、一定湿度でなければならず、建物内の空気の流動を出来るだけ定常状態に保つため、屋根と壁に区別のない滑らかな曲面の楕円状の断面形状としました。高低差のある敷地に対して若干歪ませることでスケールを馴染ませ、空気の流れを繋ぐ構成となっております。

守衛所

塀やフェンスに囲われていない TRIAD と隣地の株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ穂高工場を24 時間警備するための守衛所です。緩やかに傾斜した場所に、ソリッドな直方体がキャンティレバーで僅かに上方に持ち出される構造となっております。